俺の人生           



眠れない夜だった。

「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」
                 藤原新也著
  
コスモスの影に隠れている十四の人生が綴られる。
写真家としてのイメージが強いから
視覚情報のリヤリティで読み始めてしまった。
だからかな、写真のインパクトから言えば物足りない。
それでも、年の所為か目頭がチクチク。

随分時間が経ったようで
気が付くと、とうの昔に三丁目は過ぎ、
わたしは次のページをめくっていた。
どこに行こうとしていたのか…
名残惜しい時間と空間が抜け落ち、
季節の狭間を雨が降る。
外は冬の気配。

ノイズ交じりのドーナツ盤が、
もうひとつ、私の人生をプラスして、
十五の人生を追走する。
彼は本当にいい声だ。
 
俺の人生
ジャン・ギャバン

僕は子供の頃 大人の振りをして
声高にはなしたものだ
おいらは知っている
おいらは知っているんだ…と
それが最初だった それは人生の春だった
そして18になった時 僕は言った
分かっている
これでいい、分かっているよ…と
 
そして今
過ごした日々を振り返り
歩き回った足跡が残る大地をみつめながら
私は何も分かっちゃいない
分かっちゃいなかった、と繰り返す
…………………………






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