あるまじやの結審
●2025/9/2 産経新聞
絞首刑による死刑は残虐な刑罰を禁じる国際人権規約に違反するとして、死刑囚3人が国に執行の差し止めと慰謝料計3300万円を求めた訴訟の口頭弁論が2日、大阪地裁(横田典子裁判長)で開かれ、結審した。判決は来年1月16日
●25/09/09 MBSニュース
裁判の経緯 ☜アクセス、訴訟の内容簡単に解説されている
記事の掲載が遅れたが、2025年9月、気になっていた死刑囚の訴訟に大阪地裁の結審がでた。
※以下に以前UPした記事を貼り付けた。
Title:あるまじや/2022年12月21日
年末だから増える分けでもないだろうが、
何故か刑務所での惨事が幾つか耳に入ってくる。
中でも11月末頃のニュースには少し驚いた。
「大罪を犯した死刑囚3人が、絞首刑による死刑執行は憲法や国際人権規約に違反するとして、国に対し刑の執行の差し止めや死刑が執行される日を待ち続けることの苦痛に対する慰謝料などを求め訴えを起こした」
欧米っぽい思考の死刑囚だ、一瞬そう思った。
ではなく、名声を得たい弁護士や
話題を作りたい週刊誌が仕掛けたかもしれない。
いづれにせよとても考えさせられた。
そう言えば4~5年前だった。
差し込む朝の光を手の甲に受け豆をカリカリ、珈琲を淹れる。
色々あっても、この時間帯にホッとする私がいる。
時に人生はカップ一杯のコーヒーがもたらす暖かさの問題だ。
どこかで読んだコピーの一文に分かったような癒し心をくすぐられ時を過ごす。
TVのスイッチを入れると、海外のニュース番組が放映されていた。
フランスのTV局が日本の刑務所をレポしたドキュメンタリーだ。
特に目新しい題材ではなく、
どこの局でもよくある、ニュースが無い時の埋め草なのだろう…
くらいに思っていた。それはフランス人記者の中途半端なレポだった。
ドキュメントの趣旨を要約すると、
世界有数な安全な国である日本。
囚人の人数は約5万、フランスは7万(人口密度を考慮すれば日本の犯罪者率はもっと低い)だ。
しかし、囚人の高齢者の比率は日本が高い。
しかもその9割が万引きとか些細な犯罪で入所している高齢者で、彼らの再犯率は高いというのだ。
老女たちは生活の困窮の末に起こした軽犯罪で刑務所に入所するのだが、出所してからの再犯率が高い。
彼女たちの刑務所での暮らしは、病気がちだった日々から解放であり、
三度の食事や寝る場所を心配する必要がなくなることが要因らしい。
フランスのTVの記者はドキュメンタリー報道を最後にこう結んだ。
「刑務所は監視員を置くのではなく介護員を増やしている」
その頃、アカデミー賞で日本の『万引き家族』がノミネートされていたころで、話題づくりに倉庫に眠る映像を日本のTVが再放映したのだろう。
囚人たちの服装は夏だった。
確かに何年か前、刑務所の老人ホーム化が問題になっていたことがあった。
国の社会制度や法制度の問題、そして希薄になった家族関係が絡む。
ドキュメントの終盤、背中をまあるく屈ませて食堂を出ていく老女の肩幅と背丈の割合は1対3だ。
曲がった足が身体を右左に傾かせ、ドアの向こうに消えて行く。
今日、出所を許された老婆はどんな時間を待ったのだろうか。
達観したような彼女たちが見つけた安堵は切ない選択だったのだろう。
高齢受刑者に嫌悪する納税者が嘯く声が聞こえてきた。
「私たちは貴方達を養ったけれど、あなたたちは何をしてくれたというの」
高齢受刑者たち自身、社会から疎まれている事を充分知っている。
それは彼女たちが、例え認知症であってもだ。
老婆の時間は、既にどこにもない。
扉の向こうに消えた老婆の残像が繰り返し揺らぐ。
三人の死刑囚の基本的人権と慰謝料を求めた結末はどうなるだろう。
あらゆることの結審を待って後死刑囚はどうなるのだろう。
そして、あの出所を言い渡された老女の帰る場所は日本にない…。
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや /犀星

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