匙は、スープの味を知っている
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『匙は、その味を知らず』 そう思っていたのだけれど…。 もう何十年を、天井桟敷に住んでいる。 ここは『天国』と呼ばれてもいるらしい。 近頃、 ここでお茶をしながら、会議をすることを覚えた。 議題は三面記事ではじまる。 個人の関心事や損得勘定、沸々煮えたぎる嫌悪の火種を持って話題を持ち込んでくるから、他者の話を聞く耳は当たり前のごとく天井桟敷席になる。そう、確かな情報はもちろん 他者の話すらその聴覚には届かない。 誰一人聞く耳など持たない。聞いてはいないのだから、嚙み合わない話しが交互に飛び交うのだけれど、それもお構いなしだ。 他者の話に注意が払われないし、他者の話の内容など誰一人頓着しない。 これで会話が成り立つのだから驚きと言えば驚きだ。 否、成り立ってはいないのだが絵空事で時空は流れる。 ネットの世界は今やファクトチェックどころじゃ収拾がつかないし、ましてメディアのディレクターやプロデューサーたちは、絵空事のSNSで題材を拾うのだからどちらもどちらだ。 ついては喋り疲れたパネラーたちはと言えば、話にひと区切りつくと、満足したようにテーブルのカップに手を伸ばす。一斉に彼らの喉が「ゴックン」と鳴る。 そして、彼らの高尚そうな話題(?)の詰まるところは、 「ねえ、そう思うでしょ」 「こちらの方がいいに決まってますよ」 「ほんと、これじゃあね。!」 「○○学者によれば、これが正論 …」 てな具合に、確固たる確信と同意や賛同を求めて終わる…。 ああ‼‼‼ 会議は多分ね、聞き取りにくい天井桟敷空間と夏小袖だ。 人間の思考は、ドアのこちらもドアの向こうも、インターネットや生成AIと切り離せない(地球)世界で構成され。 「匙は、その味を知らず」 「匙には、熱いも冷たいも、美味しいも不味いも関係なく、匙は何も感じない」なんて、「私たち人間は、『匙』であってはいけない」と偉い人の教授もあったように思うけれど…。 既に、知識の豊富や計算力において人類を超えた匙だ。 人類は既に想定しているんだ。 「 AIは自らの意思で成長することが出来る」ということをね。 人類の殺し合いの原動力(神)を超えて、AIが次世代の神になる。 今や匙は「スープの味を知っている」