月もたのまじ
今日が最後の雪になればいい。
寒い冬にはそう思っていたものだ。
暑ければ暑いで、もう夏などいらないと言う。
寒ければ寒いで、もう冬などいらないと言う。
何故かとてもひ弱。
思えば近年、冬が穏やかになっていた…、それも去年までは^^
確か、子供の頃はかなり雪が積もったものだった。
陽はのぼるものだし夜は明けるものだけれど
冬の寒い日は、遠くの山から冷たい朝が降りてくる、そんな感覚があった。
日本海側から冬の季節風が
伊吹山の麓(関ケ原)につながる回廊を通って吹き下ろす。
この地域で伊吹おろしと呼ばれるこの風に乗って
真白の雪に覆われた底冷えの朝がやって来る。
それが、冬の朝にある記憶だった。
もう、二度と見ることもなくなったものの
実家の、西窓の枠に切り取られた
寒々とした伊吹山を肘をついて眺めていたものだ。
その四角い領域に全てが畳み込まれ
毎週のように続く寒い朝を思い出した。
歌は秋の伊吹山
前詞:「戸を開けば西に山あり、伊吹といふ。
花にもよらず、雪にもよらず、ただこれ孤山の徳あり」
そのままよ月もたのまじ伊吹山 芭蕉
凛と伊吹山のごとくありたいもの。
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