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本棚で眠る可愛い女たち

本棚で眠る可愛い女たち SDGsで永遠に眠る 私の机の上に、しばしば彼のおすすめの本が置かれた。 「面白そうね」と言いつつ、パラパラ指先だけが活字を追う。 そうして数十冊が本棚の片隅に追いやられたまま眠る。 そうして『三年ねたろう』どころではなく随分長い年月が過ぎた。 数日前だった、偶然、歌が刻まれた碑が目に入り、思い出したのが、 眠る本の一冊、もろさわようこ著「おんなの歴史」だった。 ― 碑に刻まれていた歌 ― 萬葉集 巻十三 旅あきうど (旅商人)の妻 つぎねふ 山城路(やましろぢ)を   他夫(ひとせ)の 馬より行くに  己夫(おのせ)の 歩(かち)より行けば  見るごとに ねのみし泣かゆ  そこ思ふに 心し痛し  たらちねの 母が形見と  吾(あ)が持たるまそみ鏡に  あきつひれ負(お)ひ並め持ち手  馬替えわが夫(せ)  夫の応(こた)へてよめる 馬買はば 妹(いも)かちならむ  よしゑやし  石(いわ)は履(ふ)むとも我(あ)は二人行かむ    難儀な山城道を他人の夫は馬でゆくのに、   私の夫は歩いてゆくので、   どんなにつらいことだろうと思えば胸が痛く   思わず泣けてしまいます。   ここに母の形見の鏡と肩掛けの布があります。   どうぞこれを馬と替えてください。   切ない思いの妻の歌に反して夫は   馬と替えてしまったらお前が困るだろう、   困難な道でもいいではないか、   私はお前と一緒に歩くことにするよ。 もろさわは、万葉相聞歌にある「馬替え わが夫(背)」と歌う妻と かの有名な『一豊の妻』、戦国乱世に「馬買い給え」と持参金を用立てた妻を比較して 二人の女の違いを「馬替え」という動機の相違と、 それに対する夫の態度にあるとしていた。 万葉の女は、前後のみさかいのない、ただひたすらな夫への愛の一念であるとし、 一豊の妻は、功利を見極めたまことに智恵深い行為で 当時の立身出世に必要な、みごとな「内助の功」であると評価しながらも、 一豊の妻の行為が愛の深さへの評価ではなく、 「内助の功」であることを、いささかさみしく思うというのだ。 比べて万葉の女とその夫の人間性豊かなやり取りは、功利とは無縁であるけれど いたわり合う愛情の故郷ではないだろうかと、女心を吐露している。 今の時代、万葉の女は虫眼鏡で探してもまず見つからないだろうし、 歴史で名