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青ネギ            

彼女は、畑の種を売る倉庫のような店舗からではなく、 それは目ぱちくりでお人形のような服を着て、 髪で両サイドの顔を隠した小顔の少女? そう子供のような女性が屯する店で わたし『青ネギの種』を見つけたのです。 季節は、まだ早い春がシャビシャビみぞれの三月でした。 わたしは簡単な栽培方法で事足る『青ネギ』です。 茶色のクラフト紙の中で60日もあれば種蒔き不要で、 丈も15cmほどになります。 収穫時期も早いのですが、根本を3〜4cm残して収穫すれば、 また新しい芽が生えてきて再び育てることができます。 独り暮らしで薬味程度でしたら十分の量で、 育てる楽しみも手伝ってか、 当時若い女性にとても人気でした。 ところが、若い女性の人気がピークに達した頃です。 我も我もと中年のおばさんが割り込んできました。 若い人の文化を後追いし、 市場を荒らすのはいつものことですが、 そうなる頃には若い女性の関心ごとは他に移り、 お店の中は中年のおばさんに占領されていきます。 何て申しましょうか中年のおばさんは…、 アッ《おばさん》は差別用語でしょうか。 もといします。おばさんではありません。 そう中年の女性たちはそれを知ってか知らずか、 若い人たちに遅れまじと、流行りに飛びつきます。 「これが流行の先端なんだから」と、 幾つも幾つも購入してゆきます。 彼女たちは自慢げにあちこちに配るようです。 そんなこんなで、 中年の女性の購買力は若い人をかなり上回りますから、 お店のオーナーの顔もほころびます。 そして私たち青ネギも、 中年の女性たちのお陰で店頭から姿を消すまでの時間に 執行猶予をいただくことになりした。 しかし、中年のおばさん達の手は 日付の新しい青ネギに伸びるものですから、 わたしは徐々に後ろに追いやられてしまいました。 それにです、騒ぐだけ騒いだ黄色い声の女心は秋の空です。 オーナーは調子づいて仕入れ過ぎたのです。 売れ残った青ネギたちと一緒に、私も末路は ゴミ 箱でした。 それでも彼女たちに食べられるよりは良かった気もするのです。 でもね…、ちゃんと育ち食卓に上った青ネギは 決して多くはない気がしています。