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12月 28, 2023の投稿を表示しています

結構な風  

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先週だ、6人の女がやって来た。 田舎じゃ忙しい盆暮れに、 一家の主婦が 気ままに飲み会…と、言う訳にはいかない。 だから我が家でランチを兼ねたお茶会みたいなものが始まった。 持ち寄った手料理やお菓子がテーブルに並ぶと 「美味しそう!」 「美味しそうじゃなくて、美味しいのよ」に始まって それぞれが腕自慢の解説に世話しなくなる。 空いた器を片付ける人が 私の前を右往左往と行き来する。 ひとしきり落ち着くと 「ブラジルでいい」だなんて言いながら 棚に鎮座する一番右のキャニスターを指さした。 この飾り瓶にブラジルが入ってるだなんて、何で知ってるの…? 勝手知ったる他人の…ではないのだが、 なんだかな~。 いつの間にかお湯が沸いて 、あっ~!食後の珈琲までもが… 「それはちょっと待て、珈琲は私が淹れるんだから!」 私は思わず声を上げた。 「この茶会、女主人は私だ。 なのに、何一つ私に出番がないなんて」 しかし、私の声は届かない。 気がつけば既に、カップは琥珀色を満たしていて、 ただ女たちはうるさく賑わしい。 何てこと…! とは言え、この賑わい、今までと違う美味しい風が吹いている。 食べるために忙しい時代があった。 あれは、よくある業界のゴタゴタに疲れ、 本業と副業が逆転したころだ。 人に会わずに暮らしたいと思った。 そんな私をふるさとは、何も聞かず迎えてくれた。 しかし、実家に父や母の姿が消え、わたしは客になる。 竹馬の友も、互いの暮らしの中で価値観がズレ、 馴れ馴れしく前の道路も渡れやしない。 そんな、どうすることもできない行き違いが起こるものらしい 。 そうしてふるさとは、時を境に知らない風が吹く。 あれもこれも嘘のように、時間も流されてしまった。   ふるさとは遠きにありて思ふもの   そして悲しくうたふもの   よしや   うらぶれて異土の乞食となるとても   帰るところにあるまじや・・・               /犀星 あの時を境に吹き始めた風は 「もう何もないよ…」と言っても勢いを落とすこともなかった。 まして 流された時間は戻ることもない。 けれど、 うるさく賑わしい6人の女が持ち込んだもの。 ふるさとにはこんな風もあるのだってこと。 そう、このごろ、少し心が緩んで、やっと気付いたということ。 そりゃね、毎日はしんどいけれど、こうした田舎の付き合いって なん