移ろう色

 



万葉の色は、今日のような鮮明な色ではありませんでしたが
紅花、紫草、露草など、植物や土を使用した豊かな色彩の中にありました。
   つき草に衣色どり摺らめども 移ろふ色といふが苦しさ
移り気な男の申し出をためらう心が歌われているのですが
月草(露草)は山藍と同じく水に流され易い移ろう色でした。
紅花(末摘花)や紫草などは大変貴重な染料で
それを用いた紅や紫は色が濃くなるほど高価なものだったようです。
濃染(こぞめ)の紅色は皇族や高い身分の人に
紫はローマ・ギリシャでも、ことに中国では天帝の色であり最高位の色とされ
日本でも、一般に使用を許されない色「禁色/きんじき」でした。
対して、だれでも着用が許された淡い紅色などは「聴色/ゆるしいろ」と呼ばれたようです。

材料も高価であり、染め色を出す事の難しい色(紅色、紫根色、月草色)は
同時に、とても移ろう色(変わりやすい)です。
それに対し 、はじめからくすんだ橡の色は
染めるのも容易な染料として、庶民の暮らしにあったようです^^





色褪せない橡(つるばみ)の色の器でお茶しませんか。




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