いい女、
それをイットガールと呼ぶ    



『イットガール』

この単語がどれほどの認知度があるかは分からないけれど。
映画? ファッション? に
関心がある人の認知度は高いかもしれない。
 
「イットガール」の呼び名は、1927年の映画「It」(「それ」の意)によって
一世風靡した女優クララ・ボウ(Clara Bow)が「It Girl」と呼ばれたことに因み、
愛らしさとセクシーさを兼ね備えた女優やモデルを指して、呼ぶようになった。
日本に「イットガール」と呼ぶ文化がいつ頃伝わったのかは知らない。

 
ただ何年か前、毎年のようにモンクレール(ダウンジャケット)を欲しいと思い、
もちろん思うだけで、ダウンごときで30万なんて気軽には手が出ないから
諦めつづけて時は過ぎ…デスガ^^
でも見るだけならタダなのだと思い、ネットを色々チェックしていたことがある。
その時ヴォーグ日本版のHPで「イットガール」という懐かしい単語を見つけた。


 
あれは随分むかしのことになる。まだわたしが美しかった(…?)ころ^^
打ち合わせを終え帰社する途中、同行の上司が車窓に張られた広告を指し
「僕はこの広告のコピーに興味を覚えましたが、君はどうですか」
と聞いてきたのだ。
しばらく指示された広告をながめ、
「とてもイットが悩ましい、この《イット》が気になります」と答えると
「僕もそう思います」
それで話は終わった…。

 
それは山手線ドア脇の車窓に張られたヘチマ化粧水の広告だった。
全体のビジュアルデザインは当時の庶民派中高年向き(地味~^^)
コピー全体は忘れてしまったが、かなり古めかしさを感じたものだった。
広告は陳腐化との境界を遊ぶ面白さもあるけれど
少し早いというか、すこし遅いというか
何だかやぼったくて使いこなされていないと、生意気にもその時は思った。
 
 
けれど、この《イット》が妙に気になっていて。
イットを文脈から、“it is …”のitと単純理解はできるのだけど。
つまりこの商品を使った女性は、美しい肌を手に入れるだろう。
そしてそれ(化粧水)=イット⇒美しい女と繫がる。
何と言ってもネーミングがやぼったい、それでも野暮な商品名がメージさせる
腰が括れた女性の色香が伝わるからだろうか、
「とてもイットが悩ましい」とコピーが結ばれると、
ヘチマ化粧水を使用する女の愛らしさとセクシーさが創造できるのだが…
ネットの充実度はまだまだのころだった。
急ぎ会社に戻って辞書を引いたことを覚えている。
 
イット:
アメリカの女性作家エリナ・グリーン原作の映画“イット”から出た言葉。
性的魅力、色気、イットガール…
 
《イット》そのものは1927年刊の小説で、名作といわれたものらしい。
もちろん、私の貧弱な知識の引き出しに在るはずもないが。
 
しかし、化粧水の車窓広告には文学的ストーリーが隠されていたということに、
改めて感動した記憶がある。
このコピーライターはかなりのお年の方だったかも知れない。
そうだとしても、そうであるならなおのこと、
彼は文化に造詣が深く、見識豊かな知識人だったのだ。

あの時、
「全体のビジュアルデザインは庶民派中高年向き(地味~^^)
コピーもちょっと古めかしくて、多分中高年のコピーライター」
だなんて判断したわたしの教養の無さが露呈した。

とは言え当時は、コピーから「色っぽい女性御用達の化粧水」と想像できても、
《イット》の意味を理解していた消費者は多くはなかったという気がする。
オーナーも、広告の効果をどのように判断したかはクエスチョンだけど、
しかし、ターゲットが中高年であったとしても、
この広告の宣伝効果に疑問は無かっただろうか。

地味な広告にGOを出したオーナーの選択は広告効果より文学だったのだ。
でもこんな感性嫌いじゃないのだ。
素直に言えば、大好きだ。。。
広告コピーに文化を意識したはじめてのことだった。



 


コメント

kanata さんの投稿…
こんばんは。
私が美しかった頃の〈いい女〉は『大和撫子』『小股の切れ上がった』とかでした。
イットガールと正反対のような感じ。
もはや目指しようがありません(笑)
あきのの さんの投稿…
気分が低調かなって案じていました。
でも、ほんとに心配してくれる家族がいらっしゃるのだから幸せですね^^
案ずるより産むがやすしですから、
しっかりご主人やお嬢さんや、そうダダちゃんにも甘えて、
大船に乗ってください。

それにね、目指さなくても、
akigasumiさんは十二分に〈いい女〉の域ですね。
何となくずっといい女の匂いがしていました。
『大和撫子』か『小股の切れ上がったいい女』か
イットガールかは分かりませんが、
スッキリと背が高く知性が感じられるから『大和撫子』でしょうか。