夏が来た   



衣替えの季節が来ると
御簾や障子、衝立の設えがかわる。
じゃなくて変わったものだ。
部屋の中は飴色になって夏になる。
蚊取り線香とうちわをあおぐ影が
縁側のまどろみにゆらいだ。もう昔のこと…

沓脱石からつっかけが消えた。
蚊取り線香の匂いが消えた。
うちわのゆらぎも消えた。
御簾を通過してくる飴色の夏が消えた。
あれもこれも時代のごみ箱に捨てられた。
人の手が遠く、実家の庭は夏草が忙しく茂る
あれもこれも…、そう、あれもこれも。
草むしりをする背中は振り向くこともない。







今朝、洗濯機に放り込んだ優れもののカーテンを
再びレールに戻しながら…。
遠くで時を刻む音がチクチク、目頭もチクチク。

繰り返す季節がしんどい時がある。





 

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