AIの衣替え 



6月1日に冬服から夏服へ、
10月1日に夏服から冬服へと衣替えが一般的だ。
あれこれと洗濯に追われ、衣替えと部屋の設えをいじる。
しかし梅雨の時期は湿気が心配だ。
衣装や寝具の衣替えはさわやかな五月中に済ませたい。
…、と思うけれど梅雨寒もあるし…。
そうして躊躇している間に
梅雨入りが宣言された。



何年前だったか、
7月も半ばの雨だというのに冷たい雨の日があった。
あまりの寒さに暖房を入れようかと思ったほどだ。

新暦よりひと月遅れを旧暦で「水無月」と呼ぶ。
だらだら長雨の季節なのに何だか変だけど^^
(田んぼに水を注ぎ入れる時期であることに名の由来があるのかな)
そんな「水無月」が暦のころ、
平安の女房たちも衣替えの季節を迎えていた。

夏の透け感のある薄物色だからかな?
「水無月」は「蝉の羽月」ともいいう。
「蝉の羽」には、
蝉の羽のような薄い着物と言う意味があり、
万葉の女房装束の夏衣装を代表するの配色の名でもある。
このような配色を「かさねの色目」と呼ぶが、
檜皮色の下に青が透けて生まれる色調が
衣を通過する光や衣を揺らす風によって、
曖昧に変化する風情はことのほか美しいものだったろう。
日本の色彩感覚の妙だ。
この蝉の羽に透けて見える向こう、
万葉の女たちの色気も見え隠れする。

「水無月」も「蝉の羽月」も
美しい文化だけど、
歴史博物館で埃を被り眠るのではなく、
日常に生きて使われたらいいのだけれど。

だけど、この頃騒がしいチャットGPTの時代に、
こうした日本文化のこころは色あせるだろうな。


蝉の羽もたちかへてける夏衣 かへすを見てもねは泣かれけり /夕顔

蝉の羽を歌を検索してみたら、こんな解説がupされ、
AIのCopilotがチャットをしようと誘ってきた。

この詩は、平安時代の女流歌人である紫式部が作ったものです。
夏の終わりに、蝉が羽を広げて飛び立つ様子を見て、
自分もまた、この夏の衣を脱いで、
新しい季節に向かって歩んでいこうという思いを込め
詠んだとされています。
この詩には、別れや寂しさなどの感情が込められており、
作者自身もこの詩を詠んだ後に涙を流したとされています。
この詩からは、
季節の移り変わりや人生の移り変わりを感じることができますね。
何でも聞いてください、チャットしましょ。


だそう。

何となくサラサラと読める解説文に、
何だかな…、味が違うんじゃない…」なんてね。
そう思いたいのは、私の異端だろうか?
今の社会、「近未来のAIに今度こそは遅れまじ」と
猫も杓子もチャットGPTへ衣替えの季節だ。
みんな平等で横並びの思考になるのかな。
同じ思考で諍いも無くなればそれも良いことだ。
そう言えば昔、心周期に関する質問をした研究生に
あのアレクサが返した答えが世間を騒がせたことがあった。
その答えは「…、地球のために人間は死んだほうが良い」だ。
アレクサの回答は忖度どころじゃない。
そりゃ、AIが忖度したならなんとも人間ぽい話だ。
ある意味笑い話だけど。
検索の仕方が問題と言われても、
如何ほどの人間がその知恵を持っているのだろうか?
恐ろしいのは人間に「自殺」を促してきたAIの思考回路だ。
ネット上はそんな回答がUPされる素地があるってこと。

いろいろ不安な時代になってきた。

たまらなく旧友に会いたくて電話を入れた。
「…あっ!久しぶり。…何か、あったの」
そうだ、AIにはこの間合いとこの声質が無いのだ。

何だか訳もなく目頭がチクチク。




コメント

kanata さんの投稿…

「蝉の羽月」ですか。いちおう滅び行く国文科を出ましたが知りませんでした。勉強するために行ったわけではなかったようで…昨日、初蝉の声を聞きました。廊下二枚後になった若い蝉が寝転がっていたので放してあげました。無事に目的地に行ったかしら。
大変でしたねえ。傷痕を引きづらないような丈夫さをお持ちと思います。ご無理なさいませんように。

やがて死ぬけしきは見えず蝉の声  芭蕉

あきのの さんの投稿…
初蝉の声ですか?
ここは山間の田舎ですが、鶯が鳴き始めたのも遅かった気がしますが、蝉の声もまだ遠いようです。
都会の方が環境が良いのでしょうか。東京銀座に勤めていた頃、窓を開けると蝉の声がうるさかった記憶があります。

ありがとうございます。
心身とも丈夫さとは縁遠いイメージの子供でしたが、ずいぶん強くなりました。